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ネットワークの停滞を防ぐXRPL指標の正しい読み方と2026年の展望

🎧 音声で聴く:ジョンとリラが本記事をもとに、現場視点と戦略視点から独自の見解をディスカッションしています。記事では詳細なデータと参照リンクをまとめています。

ご注意:暗号資産は価格変動が極めて大きい資産です。本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

導入

XRP Ledger(以下XRPL)の2025年第4四半期、新規アドレスは42万5,400件。日次アクティブアドレスは約4万9,000、日次トランザクションは平均183万件。
数字だけ見れば活発に見える。だが、その内訳を分解しなければ、実態は掴めない。

本記事では、CryptoSlateの分析記事をもとに、XRPLの「ネットワーク健全性」を正しく読むための指標と、その読み解き方を整理する。価格だけでなくオンチェーンの構造を追いたい方に向けた内容だ。

背景と課題

2026年に入り、XRPLを取り巻く環境に2つの大きな動きがあった。1つ目は、RippleとAviva Investorsが2025年2月11日に発表した提携だ。従来型のファンド構造をXRPL上でトークン化する意向を示し、「2026年以降にかけて」実施する計画とされている。

2つ目は、Canaryが2025年11月にXRPファンドを立ち上げたこと。機関投資家のXRPへのアクセス手段が増え始めている。

こうした動きに伴い、「XRPLは決済インフラとして成長しているのか」という問いが改めて浮上している。ところが、オンチェーンの「利用」を語る際、決済・取引所活動・バリデータ運用といった異なる行動がひとまとめにされやすい。ここに誤読の原因がある。

正直なところ、アドレス数やトランザクション数の「増えた・減った」だけを追うのは、体温だけで病気を判断するようなものだ。内訳の分離こそが2026年のモニタリングで最も重要な課題になる。

技術の核心

XRPLのコンセンサスモデルはUNL(ユニークノードリスト)に基づく。UNLとは、各サーバーが「結託しないと信頼するバリデータのリスト」のことだ。このリストに載ったバリデータの信頼関係が、ネットワーク全体の安定性を左右する。

標準的な定足数要件は、信頼されたバリデータの80%だ。言い換えれば、信頼リスト上のバリデータのうち20%超がオフラインになると、新しいレジャーの検証が停止する。決済インフラとしての信頼性を評価するなら、ウォレット数やDEX取引量と同じダッシュボードにバリデータの稼働状況を置く必要がある。


図解:XRPLネットワーク健全性の指標体系とバリデータ定足数の仕組み

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決済件数と決済金額は別物

ネットワークの健全性を測るには、「決済件数」と「決済金額」を分けて把握する必要がある。トランザクション数が動いても、それが経済的な決済を反映しているとは限らない。Messariの2025年第4四半期レポートによれば、決済型トランザクションは前四半期比8.1%減90万9,000件だった。(Messari Q4 2025レポート)

アドレス数は「ユーザー数」ではない

Messariの報告では、2025年第4四半期のXRPL新規アドレスは42万5,400件(前四半期比4.9%減)。(Messari Q4 2025レポート) 日次アクティブアドレスは平均約4万9,000、日次トランザクションは平均183万件だった。

ただし、ウォレット作成はキャパシティの指標であり、ユーザー数そのものではない。1つの主体が多数のアドレスを管理していたり、自動化によってアカウント生成が膨れることもある。

トラストラインとDEXスループット

トラストラインはXRPL上で特定のトークンを受け取る意思表示であり、資産ネットワークの広がりを測る指標になる。Messariの報告では、TrustSet(トラストライン設定用のトランザクション)は2025年第4四半期のトランザクション構成比で0.7%を占めた。(Messari Q4 2025レポート)

DEX活動については、ネイティブのオーダーブック(CLOB)とAMMが分離して計測されている。2025年第4四半期の平均日次CLOB取引量は710万ドル(約10億6,500万円相当、1ドル=約150円換算)で、前四半期比10.1%減。AMM取引量は130万ドル(約1億9,500万円相当)で、前四半期比24.9%減だった。(Messari Q4 2025レポート)

ここで重要なのは、取引量は「スループット(処理量)」であり「流動性の厚み」とは別だということ。取引量が急増しても、注文板やAMMリザーブの深さが伴わなければ、一過性のイベントに過ぎない可能性がある。

2026年のモニタリングで見るべき2つのシナリオ

  • 持続シナリオ:AMMとCLOBの取引活動が安定的に続き、トラストライン設定活動も維持される場合。スループットと資産ネットワークの拡大が連動していると評価できる。
  • 回帰シナリオ:DEXスループットが過去四半期の水準に戻る場合。取引量の急増はイベント駆動だったと判断される。

指標の読み方としては、アドレス生成数とトラストライン設定活動が複数四半期にわたって同方向に動いているかが鍵になる。アドレスが増えているのにトラストライン設定が減っていれば、アドレスだけ作られて資産接続が深まっていないことを意味する。

応用と市場への影響

RippleとAviva Investorsの提携は、「2026年以降にかけて」ファンド構造のトークン化を進める計画とされている。つまり、現時点で測るべきは発行量ではなく、実装マイルストーンの進捗だ。

マクロ的な文脈として、McKinseyはトークン化資産の規模を2030年までに約2兆ドル(基本ケース)と推計し、シナリオ幅として1兆〜4兆ドル(約150兆〜600兆円相当)を提示している。(McKinsey推計) 一方、RippleとBCGによる予測では2033年までに18.9兆ドルと大幅に高い数字が示されているが、インフラの断片化や規制の不均一性といった障壁も列挙されている。(Ripple・BCG予測)

国際決済銀行(BIS)傘下のCPMIは、ISO 20022のデータ要件の整合化を2027年末まで維持する方針を示している。決済の近代化は数年単位のタイムラインで進む。短期的な「採用」の物語に飛びつくのは早計だ。

XRPL ネットワーク健全性ダッシュボード(指標一覧)

モジュール 指標 最新ベースライン 2026年の注目理由 出典
インフラ健全性 コンセンサス信頼面(UNL) XRPL財団およびRippleが公開するデフォルトUNLリスト 「決済レール」の信頼前提を定義 XRPL UNL文書
インフラ健全性 稼働閾値 80%定足数。信頼バリデータの20%超がオフラインで検証停止 本番利用における可用性の許容範囲 XRPL文書
採用指標 新規アドレス Q4 2025:42万5,400件 ウォレット形成率(ユーザー数ではない) Messari Q4 2025
採用指標 トラストライン設定活動 Q4 2025:TrustSetがトランザクション構成比の0.7% 資産ネットワーク拡大の代理指標 Messari Q4 2025
市場活動 DEXスループット(CLOB対AMM) Q4 2025日次平均:CLOB 710万ドル/AMM 130万ドル 取引場所ごとのスループット推移 Messari Q4 2025
決済(分離計測) 決済トランザクション数 Q4 2025:90万9,000件 決済と取引所活動を分離するために必須 Messari Q4 2025
決済(分離計測) 決済金額 (元記事に具体値の記載なし) 決済インフラとしての主要KPI 要追加計測

データを追ってみた感覚だと、この表の中で最も見落とされやすいのはインフラ健全性の部分だ。ウォレット数やDEX取引量に目が行きがちだが、バリデータの稼働状況が崩れれば他の指標はすべて意味を失う。決済レールとしてのXRPLを評価するなら、可用性の監視は利用量と同等の優先度で扱うべきだろう。

よくある誤解ミニコーナー

誤解①:「新規アドレスが増えた=ユーザーが増えた」

アドレス数はキャパシティの指標であり、ユーザー数の正確な反映ではない。1つの主体が複数アドレスを持つことも、ボットによる自動生成もある。アドレス数だけで「採用拡大」と結論づけるのは危うい。

誤解②:「トランザクション数が多い=決済が活発」

XRPLのトランザクションにはDEX取引やトラストライン設定など、決済以外の多様な操作が含まれる。Messariの報告では、決済型トランザクションはQ4 2025で前四半期比8.1%減。トランザクション総数だけ見ていると、実際の決済動向を見誤る。

誤解③:「DEX取引量が高い=流動性が豊富」

取引量はスループット(処理量)の指標であり、流動性の厚みとは別概念。注文板の深さやAMMリザーブの残高を確認しなければ、取引量の急増が持続的なものかイベント駆動かは判断できない。

レベル別アクション

初級者向け(保存用チェックリスト)

  • XRPLの「トランザクション数」と「決済トランザクション数」が別物であることを理解する
  • 新規アドレス数=ユーザー数ではない、という前提を持つ
  • Messariの四半期レポートを定期的に確認し、数字の推移を追う習慣をつける
  • バリデータの80%定足数ルールを覚えておく(20%超がダウンすると検証が止まる)

中級者向け(保存用チェックリスト)

  • 四半期ごとに、新規アドレス数とTrustSetトランザクション比率が同方向に動いているかチェックする
  • DEXスループットをCLOBとAMMに分けて追い、持続シナリオと回帰シナリオのどちらに近いか判断する
  • Ripple・Aviva Investorsのトークン化計画について、発行量ではなく実装マイルストーンの進捗を追う
  • 上位アカウントのXRP集中度やDEX取引のペア集中度にも注意を払う(安定したデータソースが確保でき次第)
  • バリデータ稼働状況をDEXやウォレットの指標と同じ頻度で確認する

上級者・機関投資家向け(保存用チェックリスト)

  • McKinseyのトークン化資産推計(2030年に1兆〜4兆ドル)とRipple・BCG予測(2033年に18.9兆ドル)の差異を前提として認識し、XRPLのシェア獲得をオンチェーン指標で検証する
  • ISO 20022整合化の2027年末期限を決済近代化のタイムラインとして組み込む
  • ウォレット生成のクラスタリングパターン(取引所起因かプログラマティックか)を分析し、保有集中リスクを評価する
  • Canary XRPファンド等のアクセス手段について、開始日と発表日の両方を記録し、市場影響を正確に紐づける

未来展望とリスク

2026年の注目点は明確だ。Ripple・Aviva Investorsのトークン化計画が「意向表明」から「具体的な実装」に進むかどうか。これが進まなければ、XRPLの「決済レール」としての物語は期待先行のまま停滞する。

リスクとして元記事が指摘しているのは、保有集中の問題だ。XRP保有が上位アカウントに偏っている場合、DEX活動が少数のプレイヤーに依存している場合、ウォレット生成が取引所やプログラムに集中している場合、いずれも数字上の「成長」が実態を反映しない恐れがある。元記事はこの点について、安定した定義のデータソースが確保されるまでは数値的な主張を避け、「解釈モジュール」として方法論的に扱うべきだとしている。

加えて、McKinseyとRipple・BCGの推計値には大きな開きがあり、トークン化市場の成長見通し自体が不確実だ。RippleとBCGの予測はインフラの断片化や規制の不均一性を障壁として挙げており、楽観的な数字だけを切り取って読むべきではない。

日本の投資家にとっては、XRPは国内取引所での取り扱いがあるため、アクセス面でのハードルは比較的低い。ただし、海外取引所を利用する場合は、金融庁に未登録の業者である可能性があり、日本の投資者保護制度の対象外となる点に注意が必要だ。また、暗号資産の利益は雑所得として最大55%(所得税+住民税)の課税対象となる。

まとめ

XRPLのネットワーク健全性を測るには、トランザクション総数やアドレス数といった表面的な数字だけでは不十分だ。決済と取引所活動の分離、アドレスとトラストラインの連動性、CLOBとAMMのスループット推移、そしてバリデータの稼働状況。これらを組み合わせたダッシュボードが、2026年の指標読解の基本形になる。

単一四半期の変動で結論を出さず、複数四半期の傾向で判断すること。そして、トークン化計画のような大きな物語は、発行量ではなく実装の進捗で計測すること。地味だが、これがノイズに振り回されない読み方の核心だ。

四半期レポートが出るたびに、この記事のダッシュボードと見比べてみてほしい。数字の意味が少し変わって見えるはずだ。

難しい用語ミニ解説(3つ)

UNL(ユニークノードリスト)

XRPLの各サーバーが「この相手は不正をしないと信頼する」と判断したバリデータ(検証者)のリスト。このリストに基づいてコンセンサス(合意形成)が行われる。リスト上のバリデータの80%以上が正常稼働していないと、ネットワークが新しいレジャー(台帳)を確定できなくなる。

トラストライン

XRPL上で特定のトークンを受け取ることを許可する設定。銀行口座で外貨の受け取りを有効にするイメージに近い。トラストラインの設定数が増えるということは、XRPL上で流通するトークンの種類やネットワークの広がりが拡大している可能性を示す。

CLOB(中央リミットオーダーブック)

買い注文と売り注文を価格順に並べてマッチングする、従来型の取引方式。XRPLにはこのCLOBがプロトコルレベルで組み込まれている。AMM(自動マーケットメイカー)とは仕組みが異なり、両者の取引量を分けて計測することで、DEX活動の性質をより正確に把握できる。

参照リンク・情報源

執筆日時:2026-02-18T18:59:36.992Z
本記事は情報提供を目的としています。最新情報は必ず公式サイト・取引所でご確認ください。
投資判断は自己責任で行い、余剰資金の範囲内で取引してください。
 

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