コインチェック事件とその後

2018年初頭に暗号資産(仮想通貨)の盗難事件があり、国内でも一、二を争うシェアを得ていた状態から一転、その存続すら危ぶまれるほどの苦しい立場に追い込まれてしまった日本の暗号資産(仮想通貨)取引所、それがコインチェックです。事件の前は有名な芸能人などを使い沢山のCMを流していたこともあって、暗号資産(仮想通貨)取引を行っていない人の間でもかなりの認知度を誇っていました。それだけに事件による影響も甚大で、正しい内容だけでなく誤ったものも含め、実に様々な批判を受けてその名前は暗号資産(仮想通貨)ニュースサイトなどでもあまり語られることの無い、一種のタブーのような存在となってしまうことになります。

しかしながら、コインチェックは暗号資産(仮想通貨)取引所としての運営を止めたわけではありません。事件以降その対応や色々な改革を行いつつ、今でも誰しもが利用可能な日本の暗号資産(仮想通貨)取引所であり続けているのです。ここではそんなコインチェックについて、事件の概要と事件後の流れの大きく二つに分けて様々な部分を見ていきたいと思います。

コインチェックの盗難事件について

その評判を一気に落とす原因となってしまったコインチェックで起きた事件は、暗号資産(仮想通貨)、ネムの盗難です。犯人は未だ捕まっていませんが、その手口はハッキングによりコインチェックのシステムに侵入し、コインチェックが顧客から預かっていたネムを自分たちのウォレットへ移動させるという大胆なものでした。移動されたネムはさらに別のウォレットやサイトなどいくつもの場所に移され続けたため、現在もネムの運営者を中心に事件の捜査は続けられているもののその追跡は極めて難しいものになってしまっています。

しかしながら、暗号資産(仮想通貨)について情報を聞きかじったことがあるような人なら、それには高いセキュリティがあるといった話を耳にしたことがあるかもしれません。それなのに、なぜネムは盗まれてしまったのでしょうか。ネム自体に欠陥があり、他の暗号資産(仮想通貨)よりも盗みやすかったのでしょうか。そうではありません。この事件の原因は、完全にコインチェックのセキュリティの低さにありました。犯人にとって、ネム自体の強固なセキュリティを突破することはとてもできませんが、コインチェックのシステムに侵入しその取引情報を書き換えてしまうことなどとても簡単だったのです。実際、コインチェックのセキュリティは、暗号資産(仮想通貨)をインターネットから切り離されたハードウォレットに保存していなかったといったこともあり他の暗号資産(仮想通貨)取引所よりも低く、狙われやすかったと言われています。

けれどもややこしいのは、では他の暗号資産(仮想通貨)取引所なら大丈夫なのかというとそうとも言い切れない点です。どんなにセキュリティを強化しても、日々進化する犯人の巧みな手口から暗号資産(仮想通貨)を絶対に守るということはできません。事実コインチェックの事件以降も、海外取引所では盗難事件が何度か起きてしまっています。確かにコインチェックのセキュリティの低さが事件を招いたかもしれませんが、他の暗号資産(仮想通貨)取引所でもこのような盗難事件が起きる可能性が十分にあるというのも一つの事実なのです。

事件後のコインチェックの対応

起きた事件のことはひとまずおいておき、その対応について考えるとコインチェックのものは決して悪いとは言えないものでした。むしろ良い、素晴らしいとすら言えてしまうかもしれません。コインチェックは盗難被害に遭った人全員に対し、被害額と同額を当時のネムのレートを準拠してしっかりと支払いました。暗号資産(仮想通貨)の値動きは激しいため、返却時のネムは事件時の価格を大きく下回ってしまっていました。そこで、同量ではなく同額という形で返却を行うことにしたのです。これにより、一時的にネムに投資をしていた額の資産が動かせなくなってしまうような事態になったものの、それ以上の被害をコインチェックの利用者が受けることはありませんでした。

コインチェックはその後、盗難被害と顧客への返済により大きな被害を受けた取引所業務を停止するのではなく、資金の豊富なマネックスグループの傘下に入り事業の立て直しをする道を選ぶことになります。マイナスイメージのついてしまった名前を変更することもなくそのまま事業を続けていくというのはなかなかの決断で、実際にセキュリティや運営体制などを強化し安全対策の充実にしっかりと取り組んだことから、その動向に注目していた一部の人々を驚かせました。そして2018年の12月には高いハードルを越えなければならない金融庁の暗号資産(仮想通貨)交換業者に登録、その対応が形だけでないことを証明してみせたのです。

しかしながら、これでコインチェックはようやく事件による負債を返済し終えたと考えられるかもしれません。今後その利用者・取引額を増やすことができるかどうかは、これからの新たな取り組み次第と言えるでしょう。

ここまで、コインチェックにおいて発生した事件とその後の取引所としての対応について見てきました。

金額・評判共に大変な被害を受けたものの、そこから這い上がり再び取引所としての人気を得ることを目指すコインチェック。金融庁による登録も終えいよいよ本格的な始動となる今、その今後の動向には目が離せません。

コインチェック(Coincheck)の特徴や利用方法