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真価を問われる100回目のビットコイン購入が示すStrategyの企業モデル

🎧 音声で聴く:ジョンとリラが本記事をもとに、現場視点と戦略視点から独自の見解をディスカッションしています。記事では詳細なデータと参照リンクをまとめています。

ご注意:暗号資産は価格変動が極めて大きい資産です。本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

導入

Michael Saylor氏率いるStrategyが、記念すべき100回目の購入に迫っている。同社の保有量は717,131 、時価約466億ドル(約7兆円相当、1ドル=約150円換算)。しかし株価は過去6か月で約70%下落しており、この「企業財務モデル」の真価が問われる局面に入った。

背景と課題

Strategyはもともとエンタープライズ向けソフトウェア企業だった。2020年8月に最初のBitcoin購入を実施して以降、99回にわたる個別取引を積み重ね、企業によるBitcoin保有の先駆者となった。資金調達には株式発行、転換社債、その他の金融手法を組み合わせ、事実上の「Bitcoinプロキシ投資手段」へと姿を変えている。

この戦略を主導するのがMichael Saylor氏だ。同氏は購入のたびに「Bitcoinイールド」という概念を提唱してきた。株式の希薄化を伴いつつも、1株あたりのBitcoin保有量を増やすことで株主価値を向上させる、という論理である。2025年には250億ドル超(約3.75兆円相当)を各種金融商品で調達し、その大部分をBitcoin購入に充てたと報じられている(Blockchain Magazine報道)

一方で、Strategyが切り開いたデジタル資産財務モデルは広がりを見せ、現在では200社以上が合計約1,500億ドル(約22.5兆円相当)の暗号資産を保有している(Blockchain Magazine報道)。ただし、この追随企業群にはすでに深刻なストレスがかかっている。後述するが、一部の企業では株価が保有Bitcoin価値の13%程度まで低下するケースも出ている。模倣の容易さと、実際に機能させる難しさのギャップが浮き彫りになった格好だ。


図解:StrategyのBitcoin保有推移と企業財務モデルの概要

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技術の核心

Strategyの運用手法の特徴は、保有Bitcoinを担保として差し入れていない点にある。多くの小規模なデジタル資産財務企業がBitcoinを担保に資金を借り入れるのに対し、Strategyは株式や転換社債で資金を調達し、Bitcoin現物を自由な状態で保持している。この設計により、価格急落時に担保不足による強制売却(いわゆる強制清算)が発生するリスクを排除している。

具体的な購入パターンを見ると、2025年第4四半期には32,470 BTCを約31億ドル(約4,650億円相当)で取得した。直近では2,486 BTC1億6,840万ドル(約253億円相当)で購入しており、1BTCあたりの平均取得価格は約67,710ドルだった(Blockchain Magazine報道)。価格下落局面でも淡々と買い増すドルコスト平均法の考え方が根底にある。

全保有分の平均取得単価は約76,027ドル。現在のBitcoin価格が64,973ドル(Blockchain Magazine報道)であるため、含み損を抱えた状態ではある。ただし、同社はこれまでにも複数のBitcoinサイクルを経験しており、短期的な含み損を許容する運用方針を明確にしている。

正直なところ、この「担保に入れない」という一見地味な設計判断こそが、Strategyと他の追随企業を分ける最大のポイントだと考えている。担保モデルは上昇局面では資金効率が良いが、下落局面では連鎖的な強制売却を引き起こしうる。2022年のセルシウス破綻やスリーアローズキャピタルの崩壊はまさにこの構造から生まれた。

応用と市場への影響

Bitcoinは本記事の基準日時点で以下の状況にある。

項目 数値
現在価格 64,973ドル(約975万円)
24時間変動率 −4.46%
7日間変動率 −4.87%
直近高値(2025年10月付近) 125,000ドル付近
時価総額 1兆2,990億ドル(約195兆円)
暗号資産市場における支配率 58.18%

数値はBlockchain Magazine報道に基づく。1ドル=約150円換算。

2025年10月のピークから現水準までの下落幅は約48%に達する。この調整局面にあっても、主要企業によるBitcoin財務戦略の検討は続いているとされるが、Strategyほど積極的に実行した企業はほぼ存在しない。

Strategy株は過去6か月で約70%下落した(Blockchain Magazine報道)。Bitcoin自体の下落率を上回る株価の下落は、レバレッジ型Bitcoin投資手段としての性格を如実に示している。Strategyに追随した小規模企業の中には、保有するBitcoin価値に対して株価がわずか13セント相当(約87%のディスカウント)で取引されている例もある。

個人的には、Strategy株の70%下落よりも、追随企業群が「保有Bitcoin価値の13%」まで売り込まれている事実のほうが影響が大きいと見ている。これは市場が「Bitcoin財務モデルそのもの」に対して疑問を投げかけている可能性を示唆する。Strategyが100回目の購入を実行しても、模倣企業の淘汰が進む構図は変わらないだろう。

よくある誤解ミニコーナー

  • 「StrategyはBitcoinを担保にして借金している」 → 元記事によれば、Strategyは保有Bitcoinを担保として差し入れていない。資金調達は株式発行や転換社債で行い、強制売却リスクを排除する設計を採用している。
  • 「100回買っているなら毎回大量購入しているはず」 → 購入規模はまちまちで、直近は2,486 BTCと比較的小ロット。第4四半期の32,470 BTCのような大口購入もあれば、市場環境に応じた少量買いもある。
  • 「Strategy株を買えばBitcoinと同じリスク・リターン」 → Strategyは株式の希薄化や転換社債の影響を受けるため、Bitcoin現物とは異なるリスク構造を持つ。過去6か月でBitcoin以上に株価が下落した事実がその証左。

レベル別アクション

以下は情報を整理・検証するためのチェックリストであり、投資の推奨ではない点に注意してほしい。

初心者向け

  • ☐ 「ドルコスト平均法」の仕組みを調べ、価格変動リスクの分散方法を理解する
  • ☐ StrategyとBitcoin現物の値動きの違いを比較してみる(株式とBTCは別物であることを体感する)
  • ☐ 暗号資産の利益は日本では雑所得に分類され、最大55%(所得税+住民税)の課税対象となる点を確認する

中級者向け

  • ☐ Strategyの転換社債の条件(転換価格、満期、クーポン)を公開資料で確認し、希薄化の影響度を試算する
  • ☐ デジタル資産財務モデルを採用する上場企業のリストを作成し、NAV(純資産価値)に対するディスカウント率を比較する
  • ☐ Bitcoin現物保有と、Strategy株経由でのエクスポージャー取得のコスト・リスクを定量比較する
  • ☐ 海外取引所を利用する場合は、金融庁未登録業者であること、日本の投資者保護制度の対象外であることを必ず認識する

未来展望とリスク

元記事は、Bitcoin純粋主義者から「保有の集中」に対する懸念が出ていると指摘している。1企業が717,131 BTCを保有する状況は、分散型資産であるBitcoinの理念との間に緊張関係を生む。万が一、規制変更や財務上の問題でStrategyが大量売却を迫られた場合、市場への影響は甚大になりうる。

加えて、Strategyの手法が持続可能であるためには、継続的な資本調達が不可欠だ。株価が大幅に下落した状態での増資は既存株主の希薄化をさらに加速させる。転換社債の満期到来時にBitcoin価格が低迷していれば、借り換えコストが上昇するリスクもある。

一方、Bitcoinの市場支配率が58.18%と高水準を維持していることや、時価総額が約1.3兆ドル規模であることは、機関投資家にとっての流動性の安心材料になりうる。100回目の購入が実行されれば、下落局面でも企業がBitcoin蓄積を継続できることを示す一つのデータポイントにはなるだろう。ただし、それが「モデルの正しさ」を証明するわけではない点は留意が必要だ。

まとめ

Strategyは99回のBitcoin購入を通じて717,131 BTCを蓄積し、企業による暗号資産保有の象徴的存在となった。しかし、株価は6か月で約70%下落し、追随企業の多くは保有資産価値を大幅に下回る株価で取引されている。100回目の購入は節目ではあるが、このモデルの持続可能性はBitcoin市場の回復と同社の資金調達能力に依存する。

企業がBitcoinを財務資産として保有する戦略は、今後数年でその真価が問われることになる。読者にとって重要なのは、Saylor氏の強気な姿勢を追うことではなく、このモデルの構造的なリスクとリターンを冷静に理解することだろう。

難しい用語ミニ解説(3つ)

用語 解説
転換社債 一定の条件を満たすと株式に転換できる社債のこと。企業は低い金利で資金を調達でき、投資家は株価上昇時に株式に変えられる利点がある。一方、転換されると既存株主の持分が薄まる(希薄化する)リスクがある。
ドルコスト平均法 一定の金額を定期的に投資する手法。価格が高いときには少なく、安いときには多く買えるため、平均取得単価を平準化する効果がある。Strategyは厳密な定期購入ではないが、価格水準にかかわらず買い続ける姿勢は同様の考え方に基づいている。
NAV(純資産価値)ディスカウント 企業の株式時価総額が、保有する資産の時価合計を下回る状態。例えば保有Bitcoinの時価が100億円なのに、株式時価総額が30億円であれば「70%のディスカウント」となる。市場がその企業の継続性や経営に疑念を持っていることを示す場合が多い。

参照リンク・情報源

執筆日時:2026-02-23T10:40:15.965Z
本記事は情報提供を目的としています。最新情報は必ず公式サイト・取引所でご確認ください。
投資判断は自己責任で行い、余剰資金の範囲内で取引してください。

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